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『CHASM』 インタビュー
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PSE法について
MESSAGE FROM RYUICHI SAKAMOTO

電気用品安全法(PSE法)について

ぼくが「PSE法」の存在と問題を知ったのは、つい2月の始め、
ある友人がくれたメールででした.
この法律によると2006年の4月1日から、電気楽器、
ギターアンプ、電子楽器、レコーディング機器、ラジオ受信機、
アナログ/デジタル・テープレコーダー、ビデオテープレコーダー、
ターンテ ーブル、ジュークボックス、音響機器、
あるいはその他の家電など、電源トランスを内蔵している
全ての電気用品の売買ができなくなるそうです.

このままでは専門機器を支える中古機器販売、
下取り市場も閉鎖せざるを得ない状況になることは必至で、
これからの日本の音楽と芸術文化の発展に
大きな支障をきたすことになります.
もっとはっきり言えば、これは文化破壊です.

ぼく自身、実は熱心なヴィンテージ(またはアナログ)
信奉者ではありません.
むしろ新しい機材を好んで使うことのほうが多いのですが、
それでも「その機材にしか出せない音」を求めて、
ヴィンテージと呼ばれる機材を所有し、使用しています.
なぜなら、昔の機材ほどそれぞれ固有の音をもっていて、
他のものでは再現できないからです.
シンセといっても、一機種ごとに音色が違います.

ぼくが最近気に入っているのは、RMIという70年代に
よく使われた電子ピアノや、それを模して作った
日本製のEP-10.あるいはArp 2600やEMS Synthiや
Fender Rhodes Pianoなどなど、
追求しだしたら本当にキリがありません.

昨今はコンピュータでシミュレートしたものも
たくさん出ていて、かなりの精度でそれらの
ヴィンテージ・シンセに近い音が出るのですが、
やはりコンピュータにシミュレートされたものと、
実際に「モノ」が鳴っているのとでは存在感が全然異なります.
例えて言えば、CDとアナログ盤ほどの違いがあるのです.

また周辺機器の、スピーカーやアンプ、はてはケーブル一本
によっても、音はがらりと変わってしまいます.
このデジタルの世でもそうなのです.
例えばニューヨークのあるスタジオでは、
わざわざ60年代に作られた
真空管のイコライザーの制作者を探し出して、
今は高齢者となっているその方に
メンテナンスをやってもらっている程です.
もちろん、他に代替がきかない貴重な音を出すからです.


古いものは貴重です.
それが失われたら、もう取り返すことができません.
何も楽器だけのことではありません.
街や言葉や技術や思想、自然や生き物なども、
同じことかもしれません.
現代は古いものを壊して新しいものを作ります.
二十世紀に加速したこの傾向はまだ続いています.
なぜそうなのか?
これは決して「気持ち」や「精神」の問題ではなく、
経済の問題です.
経済の要請からきているのです.
例えば巨大都市開発を推進する人間たちが、
古いものが嫌いなわけではないのでしょう.
もしかすると個人的には骨董が趣味かもしれない.
しかし、経済の否応ない要請として、古いものを壊し、
新しいものを作るしかないのです.

事の本質は、いらぬ公共事業としてのダムや橋建設、
あるいは護岸工事などと同根です.
これら全てが、目先の利益のために貴重な自然を破壊しています.
自然を破壊することによって、そこに依拠している
種の多様性も破壊しているのです.
どのみち人間は自然の一部であり、
自然に依拠しなくては生きていくことはできません.
ですから必ず破壊した自然のツケは、自らに回ってきます.

もうそろそろ20世紀型の自然破壊の経済を考え直して、
持続性に基づいた経済というものを考えなくてはなりません.
その萌芽は世界中にうまれつつあるのではありませんか...

話しが大きく広がりすぎましたが、実際、歳を重ねてくると、
古いものの良さ、かけがえのなさが分かるようになり、
古いモノ、あるいは街並など、長い時間を生き抜いてきたもの
に対する慈しみ、愛おしさの感情がより増してきます.

間もなく施行されるPSE法も早急に改正され、
われわれの貴重な財産が永遠に失われない環境が整うことを
望んでいます.

ちなみにぼくが主に訴えているのは、
自分の仕事に大きく関連する音楽機材についての法律の
規制緩和ですが、この法律は広く家電などにも
適用されることになります.
それら家電の中にも、すばらしいデザインのものが多くあり、
問題は音楽関連機器だけではありません.
「文化財」なのは、楽器以外のものもそうなのですから、
各業界団体が同じように声を上げ、この問題が根本的に
解決されることになればよいと思います.
 
  
from New York
坂本龍一

*本メッセージの転載、発言の一部引用などご希望の方は
info@sitesakamoto.comまでご連絡ください.
坂本龍一本人がNY在住のため、本件についてメディアからの
取材依頼をお引き受けできない状況が続いていますが、
特にメディア関係の方の積極的な発言引用を歓迎します.
 
 
参考)

RMI
http://www.hollowsun.com/vintage/rmi/

Arp 2600
http://www.hollowsun.com/vintage/arp2600_bass/

EMS Synthi
http://www.ems-synthi.demon.co.uk/emsprods.html#synthia


Fender Rhodes
http://www.fenderrhodes.com/models/mark1b.php

and up
http://www.and-up.net/


 
*日本時間2006年3月14日、本件についての記者会見があります.
坂本本人は出席できませんが、音声メッセージを送る予定です.
詳細は下記;


主題:『電気用品安全法に対する記者会見』 
主宰:日本シンセサイザープログラマー協会(JSPA)
日時:3月14日(火)15:00〜16:00
場所:MPN事務局(演奏家権利処理合同機構 Music People's Nest)
住所:〒107-0061 東京都港区北青山2-10-29 日昭第2ビル2F
連絡先:TEL 03-5772-4481 FAX 03-5772-4482
MAP URL http://www.mpn.jp/about/headoffice.html
Site URL http://www.mpn.jp/


記者会見出席者

坂本龍一 発起人(mp3メッセージ)
松武秀樹 発起人
椎名和夫 発起人

東儀秀樹    賛同者
桑原茂一    賛同者
向谷 実    賛同者(mp3メッセージ)
サエキけんぞう 賛同者

大浜和史 JSPA理事長
氏家克典 JSPA副理事長


updated on 3/13/2006 (GMT:-5:00)


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